防衛省周辺が重要土地等調査法の注視区域に指定されました

令和5年12月11日に防衛省市ヶ谷庁舎(新宿区市谷本村町に所在)周辺が重要土地等調査法に基づく注視区域に指定されました。

これに伴い防衛省から半径約1,000m以内の区域は内閣総理大臣が土地等の利用の状況について調査を行うことができるようになりました。

今回指定された「注視区域」では売買の際に届出等は必要ないため、近隣にお住まいの方が家を売るときに影響はありませんが、この「重要土地等調査法」がどのようなものなのか解説してみたいと思います。

目次

重要土地等調査法についてわかりやすく解説!

まずは新しくできたこの法律について、大まかにみていきましょう。

重要土地等調査法は、正式には「重要施設周辺および国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」という名前の法律です。

令和3年6月16日に参議院で可決・成立し、同年6月23日に公布、その一部が令和4年6月1日に施行され、同年9月20日に全面施行されました。

この法律がなぜ作られたのか、そして何を定めているのかについて、法律知識が無い方でもわかるように簡単に説明したいと思います。

法律が作られた経緯

航空自衛隊千歳基地航空祭の様子

近年、自衛隊基地等の周辺の土地が外国資本に取得されていることが各市議会や報道等で指摘され、国会でも取り上げられるようになりました。

防衛上重要な拠点の近くに怪しい人が引っ越してきても、当時国ができることは非常に限られていました。

そこでまずは、重要施設や国境・離島等の周辺において、土地等の利用状況を調査することができるように、法律が定められました。

その法律が、まさに今紹介している重要土地等調査法ということになります。

カンタンに言うと、防衛上重要な拠点の周辺に怪しい人がいないか調べたいということです。

法律の概要

重要土地等調査法によって、内閣総理大臣は次のことができるようになりました。

注視区域の指定

自衛隊や米軍の基地、海上保安庁の施設や重要インフラ(原発・空港等)、国境や離島といった重要施設の敷地の周囲1,000mの区域で、特に重要な場所を「注視区域」として指定することができます。

土地等利用調査

注視区域内にある土地等の利用状況を調査することができます。必要であれば土地等の利用者や関係者の氏名や住所その他の情報提供を求めることもできます。

土地等利用者への勧告および命令

注視区域内にある土地等を重要施設等の機能を阻害するために利用しているときは、止めるように勧告することができます。勧告を無視するときは命令することもできます。

注視区域内にある土地等の買い入れ

勧告によって土地等の利用ができなくなってしまい、所有者から買い取ってくれと言われたら、その土地等を時価で買い入れることができます。

特別注視区域の指定

注視区域の中でも特に重要な拠点は、特別注視区域に指定することができます。

そして、特別注視区域内で200㎡以上の面積の土地等の売買契約を締結する場合には、内閣総理大臣にあらかじめ届け出なければならないとしました。

重要な拠点の周辺を注視区域に指定し、区域内の利用状況の調査ができるように、また、土地等を不適切に利用しないように勧告・命令をすることができるようになりました。

さらに注視区域の中でも特に重要な場所は特別注視区域に指定し、不動産売買は事前の届け出を義務付けました。

注視区域
特別注視区域
  • 利用状況の調査
  • 不適切な利用の規制勧告・命令
  • 土地等の買取り
  • 注視区域内の中でも特に重要な場所
  • 200㎡以上の売買は届出を要す

重要土地等調査法によって、国は安全保障上の問題を土地利用の観点から対策する権限を得ることとなりました。

注視区域に指定されたらどうするの?

まずは自宅が注視区域に指定されているのか確認してみましょう。

内閣府ホームページに、区域図が閲覧できる地図が公開されています。

内閣府ホームページ重要土地等調査法「指定区域の閲覧(重要土地ウェブ地図)

線の枠内に入っていたら、注視区域もしくは特別注視区域ということになります。

もし注視区域に指定された場合はどのようにすればよいのでしょうか。

自宅が注視区域に指定されても普段の生活では気にしなくてOK!

重要土地等調査法によって自宅が注視区域に指定されても、普段の生活において気にする必要は全くありません。

なぜなら、この法律では個人情報の保護に配慮し、措置の実施は必要最小限に留めなければならないとされているからです(条文第三条より)。

普通の生活を送っている方々の個人情報や土地等の利用状況を調べるというケースは、この法律では想定されていないと考えられます。

不動産を売却するときに気を付けたいこと

注視区域内でも、普段の生活では気にする必要はありませんが、不動産を売却したいときは注意が必要です。

特別注視区域内では、土地または建物が200㎡以上の場合、不動産売買契約等を締結する前に届出が必要になるためです。

特別注視区域内で売買契約前に届け出る主な項目
  • 当事者の氏名・住所
  • 契約における目的物件の所在と面積
  • 契約の目的となる所有権等の種別と内容
  • 当該土地等の利用目的

これらの内容を、契約をする前に届け出る必要があるため、注意が必要です。

特別注視区域内で一定規模の不動産を売却したい方は、事前に届出が必要なため、不動産会社や買主と共有してうまく連携をとって進めていきましょう。

注視区域内の物件や、特別注視区域内でも200㎡未満の場合は届出は必要ありません。

まとめ

今回は重要土地等調査法について、初めて聞く方にも理解できるようにわかりやすく解説してみました。

防衛省市ヶ谷庁舎周辺の不動産売買には影響はありませんが、関東にもいくつか届出が必要な特別注視区域に指定された場所がいくつかあります。

また、今後新たに特別注視区域に指定される個所も出てくる可能性があるため、自衛隊の基地や発電所、空港等の施設の近くにお住まいの方は、家を売るときに改めて確認すると良いかと思います。

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この記事を書いた人

株式会社TERASS
新宿区不動産売却専門エージェント
住友不動産販売で8年間売買仲介を経験
その後TERASSに移籍し
売却専門エージェントとして活動中

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