媒介契約とは?
不動産を売却するときに、「媒介契約」を不動産会社と取り交わすことをご存じですか?
媒介契約とは、売主が不動産会社に対して物件の売却を依頼する契約のことです。
依頼を受けた不動産会社は、物件の売却活動を行い、買主を見つける役割を果たします。
媒介契約は不動産会社への売却の委任状のようなものです。
もっと詳しく媒介契約を解説
契約書なので、それぞれに義務があります。
- 不動産会社の義務
-
- 契約の成立に向けて積極的に努力すること
- 価格に関して意見を述べるときは、根拠を示して説明を行うこと
- 重要事項を説明すること
- 売買契約書を作成すること
- 登記、決済手続等、物件の引渡しの補助を行うこと
- 売主の義務
-
- 契約が成就したら、不動産会社に仲介手数料を支払うこと
出典:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」
当たり前ではありますが、不動産会社は買い手を見つけるために一生懸命頑張らないといけません。
価格について話すときは、根拠を示さなければなりません。不動産の売買は人生の中で何度も経験することではありません。不動産会社と売主とで情報の非対称性があるため、このような義務があります。
その他には買主への重要事項説明と売買契約書作成、引渡し手続きの補助等の義務があります。
まとめると、媒介契約とは不動産会社が買い手を探し、取引が成就したら売主は報酬を支払う、という約束です。
媒介契約の種類とその特徴
ここからは、媒介契約の種類について説明します。媒介契約には3つの種類があります。
媒介契約の種類
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
それぞれに特徴やメリット、デメリットがあります。ここからは、各契約の特徴を説明します。
種類 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
売主側 | 依頼できる会社は1社のみ | 複数の会社に依頼できる | |
直接取引NG | 直接取引OK | ||
業者側 | 5営業日以内にレインズへ登録 | 7営業日以内にレインズへ登録 | レインズへの登録義務はない |
1週間に1度報告義務がある | 2週間に1度報告義務がある | 報告義務がない | |
期間 | 契約期間は最大3カ月 | 期間の制限がない |
1. 専属専任媒介契約
概要
専属専任媒介契約は売主と不動産会社、双方に厳しい制限がある契約形態です。
売主側の制限
- 依頼する会社は1社のみ
- 自己発見取引不可
売主は他の会社に重ねて依頼することができません。
また、自己発見取引もできません。
自己発見取引は、例えば「親戚が買うことになった」というような、不動産会社の販売に関係のないところで買い手が見つかった場合に不動産会社を通さず売主買主間で直接取引を行うことです。
不動産会社側の制限
- 5営業日以内に指定流通機構への登録義務
- 1週間に1回以上、業務の処理状況を報告する義務
- 契約期間は3か月以内
不動産会社にも制約があります。
5営業日以内に指定流通機構(レインズ)への登録が義務付けられています。
また、業務の処理状況を1週間に1回以上、売主へ書面で報告する義務があります。
契約期間は最大3ヶ月です。
3ヶ月以内に売却できなかった場合、契約は期日到来で終了となりますが、期日のタイミングで契約を更新することもできます。
専属専任媒介契約のメリット
不動産会社が責任を持って取り組む
1社に絞るため、依頼された不動産会社に販売の全責任がかかってきます。
販売活動に強い責任感を持って、物件を売るために本気で取り組んでもらえます。
広告費を優先してもらえる
不動産会社は、売主から報酬を受け取ることがほぼ確実になるので、他の契約形態よりも優先して広告費用を掛ける傾向にあります。
信頼関係が築きやすい
不動産会社にとって、専属専任媒介契約の売主は最も優先される顧客です。
1週間に1回以上業務の処理状況を報告することが義務付けられているため、不動産会社に相談しやすく、円滑に取引を進めることができます。
専属専任媒介契約のデメリット
他の会社に依頼できなくなる
専属専任媒介契約は、他の会社に重ねて依頼をすることができません。
もし依頼した会社がレインズへの登録義務を怠ったり、広告活動を行わなかったりすると、良い条件での取引は難しくなってしまいます。
自己発見取引ができなくなる
「親戚が買うことになった」という場合でも、依頼している不動産会社が売買の仲介をすることになります。
自分で買い手を見つけてきても、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
自己発見取引は非常に稀なケースです。 例:「借地権売買で地主が買う」「隣地に住んでいる兄が買う」etc..
2. 専任媒介契約
概要
専任媒介契約は、専属専任媒介契約とほぼ同じものになります。
専属専任媒介契約との違いは3つあります。
- 自己発見取引ができる
- 指定流通機構への登録は7営業日以内
- 報告の頻度は2週間に1回以上
自己発見取引は滅多にありませんので、実務上は専属専任媒介契約と専任媒介契約にほとんど違いはありません。
専任媒介契約のメリット
- 不動産会社が責任を持って取り組む
- 広告費を優先してもらえる
- 信頼関係が築きやすい
専任媒介契約のメリットは、専属専任媒介契約とほぼ同じです。
1社に絞られることで、依頼した会社が責任を持って取り組み、広告費を優先してもらえる傾向にあります。
進捗報告も最低2週間に1回あります。
こまめにやり取りをするため、不動産会社と信頼関係が築きやすいです。
専任媒介契約のデメリット
- 他の会社に依頼できない
これも専属専任媒介契約と同じですが、他の会社に重ねて依頼ができないことがデメリットです。
依頼している会社が積極的な活動を行わないと、なかなか売れないという状況に陥ってしまうリスクがあります。
3. 一般媒介契約
概要
一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる契約です。
それぞれの不動産会社が別々に販売活動を行うので、自由に選べる点が大きな特徴です。
また、契約期間に特に決まりはありません。
一般媒介契約のメリット
囲い込みをされにくい
一般媒介契約では、売主は複数の不動産会社に依頼することができます。
複数の会社で売りに出ていれば、他社の問い合わせを排除する囲い込みが起こりにくくなります。
情報を公開せずに売却ができる
一般媒介契約では、レインズへの登録義務がありません。
売主が情報公開の範囲を自由に決めることができます。
例えば「一切の広告活動を行わず内々で取引をする」等の方法があります。
売主が慎重に進めたい場合や、個人情報を守りたい場合に、この柔軟性が大きなメリットとなります。
複数の会社に依頼できるため、リスクが少ない
専属専任媒介・専任媒介は依頼した会社が頼りないと困ってしまいますが、一般媒介であれば途中で依頼する会社を増やすことができます。
リスク分散しやすいのが特徴です。
一般媒介契約のデメリット
不動産会社が積極的に動かない
一般媒介契約の最大のデメリットは、不動産会社が積極的に販売活動を行わない可能性があることです。
専任媒介契約や専属専任媒介契約よりも報酬を得られる可能性が低いため、あまり積極的な営業活動を行わない場合があります。
特に広告費については抑える傾向にあり、積極的な募集活動を求めている売主にとっては注意が必要です。
不動産会社から見ると、一般媒介契約で3社同時に販売している物件の広告費が回収できる可能性は単純計算で1/3になります。
不動産会社がどのように販売活動をしているか分かりづらい
複数の不動産会社に依頼しているため情報の管理が煩雑になります。
各社が提供する条件やアクションプランが異なるので、情報の整理や管理に手間がかかることがあります。
各社がどこまで物件情報を公開しているのか、買主へのアプローチがどうなっているのかを把握するのが難しくなり、売主自身が全体像を掴みにくくなることもあります。
買主目線の交渉になりやすい
不動産会社は、一般媒介で依頼を受けている物件に購入申込が入ったとき、多少金額が安かったとしてもその買主で契約してもらえるように売主に交渉する傾向にあります。
なぜならその買主で決めてもらわないと、他の会社で契約になってしまい報酬を得られなくなってしまう可能性があるからです。
専任媒介契約・専属専任媒介契約では、売主から確実に報酬が得られるため、売主の希望に沿って価格交渉が進んでいきます。
一方で一般媒介契約では、買主が現れたら是が非でもその買主で進めてもらわないと、不動産会社は報酬を得られないという構造上の問題があります。
まとめ
今回は「そもそも媒介契約って何なの?」というところから、媒介契約の種類について解説しました。
一般媒介契約は複数の業者に自由に依頼できるため柔軟に対応できますが、不動産会社が積極的に動かないこともあります。
専任媒介契約は1社にしっかりと売却活動をお願いできるため、不動産会社が責任を持って活動してくれますが途中で変更するのが難しい点がデメリットです。
専属専任媒介契約はさらに任せる形ですが不動産会社の対応に完全に依存することになります。
自分の状況や希望に合わせて最適な契約を選んでください。